そして、今夏(こんか)の 気象(きしょう)も 危(あや)ぶまれる。
渇水(かっすい)か、大雨(おおあめ)か、冷害(れいがい)か…
心配(しんぱい)が 押し寄(おし よ)せてくる。
しかしながら、夏至近(げし ちか)い この時期(じき)は、19:00を 過(す)ぎても 空(そら)が 明(あか)るい。
長(なが)い 一日(いちにち)を、存分(ぞんぶん)に 活用(かつよう)できる。
だから、よしえ虫(むし)は ときどき 夕方(ゆうがた)から 山(やま)に 行(い)く。
授業(じゅぎょう)が 早(はや)く 終(お)わった 時(とき)などに、雨(あめ)の 心配(しんぱい)がなければ、いそいそと 山支度(やまじたく)をして 出(で)かけてゆく。
京都(きょうと)の いいところは、遠(とお)くまで 行(い)かずとも、国有林(こくゆうりん)を 擁(よう)する 山塊(さんかい)が あることだ。
しかも、歴史的遺構(れきしてき いこう)がある。
近(ちか)くの 山(やま)には、戦国時代(せんごくじだい)に 山城(やまじろ)が 築(きず)かれていた。
室町将軍(むろまちしょうぐん)が 逃げ込(にげ こ)んだ 本陣跡(ほんじんあと)もある。
よしえ虫(むし)は 山(やま)に 入(はい)ると、軍師(ぐんし)に 変身(へんしん)する。
頭(あたま)は 戦国時代(せんごくじだい)に 飛(と)んでゆく。
【軍師(ぐんし)ごっこ】
城門遺構(じょうもんいこう)の 前(まえ)では、味方(みかた)に 撃(う)たれないように、合図(あいず)を 送(おく)らねばならない。
柏手(かしわで)を 打(う)つように、手(て)を たたく。
すると、門(もん)は 内側(うちがわ)から 開(あ)けられる。
道(みち)の 両側(りょうがわ)に 一人(ひとり)ずつ 見張(みは)りの 足軽(あしがる)が 立(た)っている。≪と、想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)は 槍(やり)を 捧(ささ)げて 敬礼(けいれい)した。
足軽(あしがる)「異常(いじょう)ござりません」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫
城内(じょうない)に 進(すす)み 入(い)ると、向(む)こうから 鳥部守(とりべのかみ)が やってきた。≪と、カラスを 見(み)ながら 想像(そうぞう)している≫

鳥部守(とりべのかみ)「御館様(おやかたさま)が 連歌会(れんがのかい)を 催(もよお)されるとな」≪と、カラスが 言(い)っていると 想像(そうぞう)している≫


鳥部守(とりべのかみ)「虫守殿(むしのかみどの)も 参(まい)られるので ござろうな」≪と、カラスが 言(い)っていると 想像(そうぞう)している≫

鳥部守(とりべのかみ)「なんぞ 御用(ごよう)でも?」≪と、カラスが 言(い)っていると 想像(そうぞう)している≫

鳥部守(とりべのかみ)「なんとな




尾根道(おねみち)には 数多(あまた)の 鳥(とり)が 啼き競(なき きそ)っている。


特(とく)に ウグイスが 老長(ろうた)けていた。
鶯守(うぐいすのかみ)「虫守殿(むしのかみどの)、いかがでござろう?」≪と、ウグイスが 言(い)っていると 想像(そうぞう)している≫


鶯守(うぐいすのかみ)「いやいや、虫守殿(むしのかみどの)には かないますまい」≪と、ウグイスが 言(い)っていると 想像(そうぞう)している≫


鶯守(うぐいすのかみ)「なんと



鶯守(うぐいすのかみ)「そうなされるがよい。後(のち)ほど 参上仕(さんじょう つかまつ)ると 御館様(おやかたさま)に 申し上(もうし あ)げてくれ」≪と、ウグイスが 言(い)っていると 想像(そうぞう)している≫


山科分岐(やましなぶんき)に さしかかった。
ここにも 見張(みは)りの 足軽(あしがる)が いる。≪と 想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)は 槍(やり)を 捧(ささ)げて 敬礼(けいれい)した。
足軽(あしがる)「異常(いじょう)ござりません」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)「軍師殿(ぐんしどの)も 歌会(うたかい)へ 参(まい)られまするか?」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)「さようで ござりまするか」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)「わたくしも ふるさとが 恋(こい)しゅうなりました」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)「かしこまりました

分岐(ぶんき)した 尾根(おね)を 先(さき)に 進(すす)むと、沢ノ川(さわのかわ)に 出(で)る。
ここは、水軍(すいぐん)の 兵站地(へいたんち)である。≪と 魚(さかな)を 見(み)ながら、想像(そうぞう)している≫


楢守(ならのかみ)「これは これは 軍師殿(ぐんしどの)


楢守(ならのかみ)「いや、拙者(せっしゃ)は 不調法者(ぶちょうほうもの)ゆえ 失礼(しつれい)させてもらった」≪と ミズナラが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫



楢守(ならのかみ)「いかにも


沢ノ川(さわのかわ)から 毘沙門谷(びしゃもんだに)に 入(はい)る。
ここには 仁明天皇 女御 藤原順子(にんみょうてんのう にょうご ふじわらののぶこ)の 眠(ねむ)る 後山階陵(のちの やましなの みささぎ)がある。


すると、上(うえ)から 突然(とつぜん) 黒い羽虫(くろい はむし)が 顔(かお)を めがけて 飛(と)んできた。




刀(かたな)を 振り抜(ふり ぬ)いて 成敗(せいばい)した。≪と、想像(そうぞう)している≫


尼君(あまぎみ)「虫守殿(むしのかみどの) かたじけのうございます」≪と 尼君(あまぎみ)が 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫

尼君(あまぎみ)「いいえ、今日(きょう)は かようなことも ありましたゆえ 静(しず)かにしております」≪と 尼君(あまぎみ)が 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


ここからは 毘沙門谷(びしゃもんだに)を ゆるゆると 登(のぼ)ってゆく。
去年(きょねん)の 台風(たいふう)の 被害(ひがい)が どれほどだったのが、その 自然(しぜん)の 力(ちから)の 強大(きょうだい)さを 見(み)せつけられる ところである。
なぎ倒(たお)された 杉(すぎ)が 折り重(おりかさ)なって 谷底(たにぞこ)へ 沈(しず)んでいくようである。
近頃(ちかごろ)は この 景色(けしき)が 毎回少(まいかい すこ)しずつ 変化(へんか)していくのを 楽(たの)しんでいる。
国有林管理官(こくゆうりんかんりかん)が 倒木(とうぼく)の 整理(せいり)を しているのである。
左右(さゆう)の 倒木(とうぼく)を 見(み)ながら 上(あ)がっていくと 南門(みなみもん)がある。
ここにも 見張(みは)りの 足軽(あしがる)が いる。≪と 想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)は 槍(やり)を 捧(ささ)げて 敬礼(けいれい)した。
足軽(あしがる)「大杉守様(おおすぎのかみさま)が お待(ま)ちかねでございます」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫



足軽(あしがる)「お急(いそ)ぎの ことが おありで?」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)「それは お楽(たの)しみで ございますね」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


足軽(あしがる)の 声(こえ)に 送(おく)られて、南門(みなみもん)を くぐった。
ここは 桝形(ますがた)が 設(もう)けられているので、すぐ向(む)こうに もう一(ひと)つ 門(もん)がある。
ここを 抜(ぬ)けると 大杉丸(おおすぎまる)に 入(はい)る。
大杉丸(おおすぎまる)は この城(しろ)の 南(みなみ)の 守(まも)りの 最重要要塞(さいじゅうよう ようさい)である。
そのため、忍者(しのびのもの)も 多(おお)く 配置(はいち)してある。
各軍勢(かくぐんぜい)から 選(よ)りすぐった 精鋭(せいえい)で 守(まも)りを 固(かた)めた。
もちろん、軍師直属(ぐんし ちょくぞく)の 間諜(かんちょう)も 放(はな)ってある。≪と 想像(そうぞう)している≫
大杉守(おおすぎのかみ)「よう こられた


大杉守(おおすぎのかみ)「尼君(あまぎみ)を 狙(ねら)った 曲者(くせもの)を 成敗(せいばい)されたと 聞(き)いておるが」≪と スギが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


大杉守(おおすぎのかみ)「曲者(くせもの)は どこの 手(て)の者(もの)か ご存知(ぞんじ)か?」≪と スギが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫

大杉守(おおすぎのかみ)「それならいいが…」≪と スギが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫

大杉守(おおすぎのかみ)「月(つき)の 終(お)わりあたりに 大阪(おおさか)で 何(なに)やら 集(あつ)まりがあるとか…」≪と スギが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


大杉守(おおすぎのかみ)「20の 大名(だいみょう)が 来(く)るというではないか



大杉守(おおすぎのかみ)「曲者(くせもの)は その偵察(ていさつ)かもしれんな」≪と スギが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


大杉守(おおすぎのかみ)「一服(いっぷく) いかがかな



そう 言(い)って 腰(こし)を 下(お)ろすと、どこからか ヤマアカガエルが 飛び出(とび だ)してきた。


木葉丞(このはのじょう)「お久(ひさ)しゅうございます」≪と ヤマアカガエルが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫
大杉守(おおすぎのかみ)「知(し)らせてくれたのは こやつじゃ」≪と スギが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


木葉丞(このはのじょう)「はい、沢ノ川兵站地(さわのかわ へいたんち)は 城外(じょうがい)ゆえ、よからぬ輩(やから)も 入り込(はいり こ)んでいると 聞き及(きき およ)んで ございます」≪と ヤマアカガエルが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


大杉守(おおすぎのかみ)「才(さい)あるのは 虫守殿(むしのかみどの)の お手(て)の者(もの)だな」≪と スギが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


大杉守(おおすぎのかみ)「そうであったな



大杉守(おおすぎのかみ)「それは 大事(だいじ)



木葉丞(このはのじょう)「しかと うけたまわりました」≪と ヤマアカガエルが 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫
如意寺遺構(にょいでら いこう)を 登(のぼ)りつめていくいく。
ここは、沢沿(さわぞ)いに 踏跡(ふみあと)が ついていたのだが、やはり 台風(たいふう)の 被害(ひがい)で 倒木(とうぼく)が ふさいでしまっている。
したがって、如意寺遺構(にょいでら いこう)を 正面(しょうめん)から 登(のぼ)らねばならない。
往時(おうじ)は 参拝者(さんぱいしゃ)のために 石段(いしだん)が ついていたと 思われるが、現在(げんざい)は 崩れ去(くずれ さ)っているので かなり 登(のぼ)りにくい。
防災林道(ぼうさいりんどう)を 横切(よこぎ)って、さらに 高(たか)みへ 上(あ)がっていく。
すると、本陣(ほんじん)に 到着(とうちゃく)する。


小姓(こしょう)「御館様(おやかたさま)が お待(ま)ちでござります」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


本陣(ほんじん)に 進み出(すすみ で)て 帽子(ぼうし)をとり、ひざまずく。


御館様(おやかたさま)「入(はい)れ」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫
御館様(おやかたさま)の 御前(おんまえ)に かしこまった。
御館様(おやかたさま)「今日(きょう)は そちの 歌(うた)が 聞(き)けぬというが、なぜじゃ?」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


御館様(おやかたさま)「鳥部(とりべ)が 言(い)うには 先約(せんやく)が あるとか」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


御館様(おやかたさま)「東人(あずまびと)の 宴(うたげ)か



御館様(おやかたさま)「それで 東歌(あずまうた)ばかりに 興(きょう)じておるのだな」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


御館様(おやかたさま)「まぁ、よい。次(つぎ)は よい声(こえ)を 聞(き)かせてくれ」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


御館様(おやかたさま)「うむ、大儀(たいぎ)であった」≪と 言(い)ったと、想像(そうぞう)している≫


御館様(おやかたさま)「ほう、そうか

本陣(ほんじん)を 後(あと)にして 山頂(さんちょう)へと 向(む)かう。
途中(とちゅう)に 空堀(からぼり)のある土塀(どべい)が そびえている。
ここにも、見張(みは)りがいる。≪と 想像(そうぞう)している≫
足軽(あしがる)「軍師様(ぐんしさま) もう、お戻(もど)りになるのですか



足軽(あしがる)「では 歌会(うたかい)を 失礼(しつれい)なさったので



足軽(あしがる)「なるほど、軍師様(ぐんしさま)らしゅうございます



足軽(あしがる)「かしこまりました

頂上(ちょうじょう)に 到着(とうちゃく)。
ここから 火床(ひどこ)まで あと10分(じゅっぷん)の 距離(きょり)である。
休憩(きゅうけい)がてら 眼下(がんか)の 東山(ひがしやま)トンネルを 通過(つうか)する 新幹線(しんかんせん)を 見送(みおく)る。
この 方角(ほうがく)から 満月(まんげつ)が 上(のぼ)ってくる。
しかし、これから 西斜面(にししゃめん)を 下(お)りていくので、山(やま)の 陰(かげ)になってしまう。
よしえ虫(むし)が 月(つき)を 見(み)られるのは、月の出(つき の で)の 1時間後(いち じかん ご)くらいだろうか。
この辺(あた)りから、人(ひと)が 増(ふ)える。
そのため、【軍師(ぐんし)ごっこ】は そろそろ 終(お)わる。
頭(あたま)では 戦国(せんごく)の 山城(やまじろ)を 見回(みまわ)る 軍師(ぐんし)に なっていても、傍目(はため)からみたら 独り言(ひとり ごと)を 言(い)っている 奇妙(きみょう)なヤツである。
18:50
すれ違(ちが)う人(ひと)と 『こんにちは〜』と 挨拶(あいさつ)を 交(か)わして、普通(ふつう)の 登山者(とざんしゃ)になる。
火床(ひどこ)には 何組(なんくみ)かの 登山者(とざんしゃ)が いた。
三脚(さんきゃく)を 立(た)てて、夕景(ゆうけい)を 狙(ねら)っている 写真愛好家(しゃしんあいこうか)。
台湾(たいわん)からの 家族連(かぞくづ)れ。
学生(がくせい)らしき 集団(しゅうだん)。
カップル。
ビールを 飲(の)んでいる 欧米人(おうべいじん)グループ。
静(しず)かに 語り合(かたり あ)う 男性二人組(だんせいふたりぐみ)。
よしえ虫(むし)は 要(かなめ)にある 祠(ほこら)に 片膝(かたひざ)をつき 今日(きょう)の 山(やま)の 無事(ぶじ)と、楽(たの)しませてもらったことに 感謝(かんしゃ)する。
そして、愛宕山(あたごやま)を 振り返(ふり かえ)る。
刻々(こくこく)と 太陽(たいよう)が 沈(しず)んでいく。
愛宕山(あたごやま)が シルエットになる。
太陽(たいよう)が ダイヤモンドのような 光(ひかり)の 粒(つぶ)になる。
雲(くも)に 光(ひかり)が 反射(はんしゃ)する。
空(そら)の 色(いろ)が 宇宙(うちゅう)の 色(いろ)になっていく。
地上(ちじょう)に 光(ひかり)の 海(うみ)が 広(ひろ)がっていく。
雲(くも)が ばら色(いろ)に 染(そ)まる。
そろそろ 下界(げかい)に 戻(もど)ろう。
森(もり)の 中(なか)に はいると、足元(あしもと)が 見(み)えなくなった。
ヘッドライトを つけて、慎重(しんちょう)に 歩(ほ)を 運(はこ)ぶ。
19:40
山(やま)を 出(で)た。
金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)の 西斜面(にししゃめん)から 東(ひがし)の 空(そら)を 見上(みあ)げた。
もうすぐ 月(つき)が 顔(かお)を 出(だ)しそうだった。
しかし、ここで 月待(つきま)ちを していたら 蚊(か)の 餌食(えじき)に なってしまう。
しかたなく、帰路(きろ)に ついた。
数分(すうふん)して 振(ふ)りあおぐと、月(つき)が 上(のぼ)ってきていた。
大通(おおどお)りでは 車(くるま)や 店(みせ)の 電灯(でんとう)が 明(あか)るすぎた。
金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)の 参道(さんどう)に 入(はい)った。
月(つき)と 木星(もくせい)の 天体(てんたい)ショー。
アメリカの 先住民(せんじゅうみん)の 間(あいだ)では、1年(いちねん)で 6回目(ろっかいめ)の 満月(まんげつ)を 『ストロベリー・ムーン』というそうだ。
ちょうど 野(の)イチゴなどの ベリー類(るい)の 収穫期(しゅうかくき)だからである。
さて、【軍師(ぐんし)ごっこ】で 登場(とうじょう)していた 萬燈籠(まんどろ)の宴(うたげ)とは…
東北地方(とうほくちほう)では 満月(まんげつ)を『まんどろ』と 呼(よ)ぶそうである。
人間椅子(にんげんいす)の 和嶋氏(わじま し)が 言(い)っていた。
ここのところ、人間椅子(にんげんいす)ばかり 聞(き)いている。
それは、5月(ごがつ) 27日(にじゅうしちにち) 月曜日(げつようび)の 16:30 過(す)ぎに、運命(うんめい)の 再会(さいかい)を 果(は)たしてしまった からである。
よしえ虫(むし)の 家(いえ)では、ほぼ 1日中(いちにちじゅう) ラジオが 流(なが)れている。
いつものように α-stationが 台所(だいどころ)に 流(なが)れていた。
すると 突然(とつぜん)、重(おも)いビートの ベース・リフが 流(なが)れ、それに 重(かさ)なる 悲し気(かなし げ)な ギター・フレーズが 聞(き)こえてきた。
よしえ虫(むし)は「α-stationでは 珍(めずら)しいなぁ〜 これ 好(す)きな 音(おと)だなぁ〜」と、思(おも)って、手(て)を 止(と)めた。
ボーカルが 入(はい)ると、よしえ虫(むし)は「なんか 人間椅子(にんげんいす)っぽいなぁ〜 こんなバンドも 出(で)てきたんだ〜」と思(おも)って、聞(き)いていた。
サビに 突入(とつにゅう)し、「えっ




そして、ギター・ソロが 始(はじ)まって、確信(かくしん)した。




『瀆神(とくしん)』
曲(きょく)の 後(あと)、鈴木氏(すずきし)が デビュー30周年(さんじゅっしゅうねん)と ニュー・アルバム、ツアーの お話(はなし)を された。
なにもかもが、なつかしかった。
そして、もう 一曲(いっきょく)『無情(むじょう)のスキャット』が 流(なが)れた。
感動(かんどう)せずには いられなかった。
30年前(さんじゅうねんまえ)『イカすバンド天国(てんごく)』で、人間椅子(にんげんいす)を 見(み)て かなり ハマっていた。
小学6年生(しょうがくろくねんせい)のころから ハード・ロック/ヘヴィ・メタルが 好(す)きだったし、江戸川乱歩(えどがわらんぽ)も 好(す)きだった。
しかし、人生(じんせい)には 様々(さまざま)なことが 起(お)こるもので、しばらく 好(す)きな 音楽(おんがく)を 聞(き)くことから 遠(とお)ざかっていた。
それで、音楽(おんがく)は もっぱら ラジオで 流(なが)されているものばかり 聞(き)いていた。
この日(ひ)、その ラジオから よしえ虫(むし)の「中2病(ちゅうにびょう)」的(てき) サウンドが 流(なが)れ、しかも まさに 「中2病(ちゅうにびょう)」の 延長上(えんちょうじょう)に 存在(そんざい)した 人間椅子(にんげんいす)と 運命(うんめい)の 再会(さいかい)をしたのだ。
そして、不思議(ふしぎ)なことが 起(お)こった。
朝(あさ)4:30くらいから、どこからか 人間椅子(にんげんいす)が 聞(き)こえてくるのである。
よしえ虫(むし)は 冬(ふゆ)でも 窓(まど)を 開(あ)けて 寝(ね)ているので、外(そと)の 音(おと)は よく聞(き)こえる。
はじめは、よしえ虫(むし)が 人間椅子(にんげんいす)を 聞(き)きすぎて、夢(ゆめ)にも 流(なが)れているのか と思(おも)った。
ところが、ある朝(あさ) はっきりと『無情(むじょう)のスキャット』が 聞(き)こえたのである。
思(おも)わず 起(お)きて、サビを 唱和(しょうわ)してしまった。
ご近所(きんじょ)の 人間椅子(にんげんいす)好(ず)きの 方(かた)には、『京都(きょうと)ミューズ』で お会(あ)いするかもしれない。
山(やま)、自然(しぜん)、歴史(れきし)、天体(てんたい)、虫(むし)や 小動物(しょうどうぶつ)、空想(くうそう)、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル… 中学2年生(ちゅうがく にねんせい)で 愛(あい)したことは 一生愛(いっしょう あい)し 続(つづ)けるように できているのかもしれない。